洗濯をして、掃除をして、それを無我夢中で終わらせて、

時計を見ると、11時半。

レンが帰ってくるまで、あと、2時間半。


「急がなくっちゃ」


わたしは水色のスカーフと、裁縫道具を引っ張り出してテーブルにつく。

男の子の持ってる裁縫道具だから、針の本数も、糸の色も、全然少ないけれど、まあ…仕方ない。


「できるかな…」


道具に文句をつける前に、自分の腕に自身をなくす。

広げたスカーフと針と糸を交互に見て、何とかやる気を取り戻す。



今日は、大事な日。

レンの、誕生日。

レンと初めて出会った、記念日。

お母さんの、命日。



「帰ってきたら、行きたいとこあるんだけど」

朝、レンが出かける前に言った言葉。

わたしは、「うん」とだけ応えたけど、

その場所がどこか、ちゃんと知ってる。

レンは、どこに行くとかの説明はしなかったけれど、

わたしは…あれから毎年のことだから、知っている。


お母さんのお墓と、あの横断歩道。

白い花を持って、行くことになるはずだ。