身体を少し起こして、片肘をついたレンの顔が、ゆっくりと近づいてくる。



右手で頬を包まれて、見つめ合った。




「ナナ……好きだ」



「レン……」




わたしも…と言いかけたけれど、



レンの唇が、わたしの唇をふさぐほうが、先だった。




あの時みたいに、わたしは目を開いたままだったけれど、



レンの唇は、あの時よりもずっと長く、わたしの上にある。



ゆっくり、瞳を閉じた。





重なる、レンと春の匂い。



柔らかい、温かい、レンの唇。



時間が止まったと思うくらい、



優しい空気が、わたしを包んでいた――







桜色の、


大切な、



―――キスだった