君の左のポケットで~Now&Forever~

お腹がぱんぱんになったわたしたちは、桜の木の下に寝転んだ。

草の香りが、ぐっと近づいて、新しい季節の匂いがする。


見上げる桜のピンクは、光を受けて穏やかだった。

時折はらはら落ちる花びらを空中でつかんで、そっと地面に返す。


子供たちの声と、さわさわと微かな音を立ててゆれる花びらの群れ。

時間はゆっくり流れている。


首を傾けて、隣に寝転ぶレンを見る。

閉じたまぶたと少し上がった口角が、気持ちよさそうだった。


「レン」

「ん?」

「気持ちいいね」

「ああ、気持ちいいな」


桜と桜の間に、小さな雲がひとつ、浮かんでいる。

その上に飛行機。

どちらもゆっくりゆっくり、桜の中に消えていく。


「レン」

「ん?」

「あたし…」

「うん?」

「今、幸せ」

「…うん」

「すごく、幸せ」


寝転がったまま、わたしは素直にそう思った。

幸せだ。

本当に。


ただ、こうしているだけなのに、

好きなヒトが傍にいるっていうだけで、

こんなにも、満たされる。


桜のピンクが、とっても穏やかで、優しくて、甘くって、

柔らかい毛布に包まれているようだ。



隣に、レン。



大好きなヒト。



大事なヒト。