君の左のポケットで~Now&Forever~

「わあ…すごい」


大きな公園は、周りをぐるりと桜の木が取り囲んでいた。

公園って言っても広場的な公園だから、遊具はなく、青々とした芝生が広がっているだけだ。

子供たちが駆け回って、大声で遊んでいる。

ベンチに腰掛けるお年寄りや、芝生の真ん中でお弁当を広げている家族や、手をつないで桜の下を歩いているカップルがいる。

みんな、笑顔だ。


「腹減った」


お昼はもうとっくに過ぎている。

わたしもレンも腹ぺこだった。

桜の木の下に腰掛けて、おにぎりを包んできたスカーフを広げた。


「おい…」

「どーぞ召し上がれ♪」

「デカ……しかも、多すぎだろ」


10個の大きなおにぎりを眺めて、レンは驚いている。

わたしは構わず、お弁当箱の蓋を開ける。


「じゃーん」

「お、うまそ」

「玉子焼、作ったんだよ」

「やるじゃん」

「から揚げとウインナーは」

「チン、だろ」

「…そう」


レンは笑って、玉子焼を摘み上げた。

口に運ぶその様子を、じっと見つめる。

咀嚼するアゴの動きを、じいっと見る。


「ナナ、見過ぎ」

「美味しい?」

「うーん」

「…ダメか…」

「うっ」

「え?! マズイ?」

「んまい」

「もーー!」


楽しい。


嬉しい。