「お前、真似したろ」


ジーンズのポケットに手を入れて、ぶすっとした顔でユウ君がレンに言った。


「別にー」

「何でそれでお前はチュウできちゃうわけ?」

「ナナに聞け」


レンはふにゃふにゃ笑ってる。


「ナナちんさー、先にオレのところに転がり込んでくればよかったのに。何でレンなの? 何で?」


ユウ君はわたしに顔を近づけて、変な顔をして笑わそうとしている。


「もーーうっ! 何なの! なになに? わかんない!」


ふざけあって笑い始めたレンとユウ君。




突然のキス。




すごくびっくりしたのに、

すごく嬉しいのに、


何だかキスの味を楽しむ暇もなかったわたしは、少し唖然として、

それでも部屋に流れる心地のよさに、

綿飴みたいに包まれた。




何だかどさくさに紛れてしまったけれど、


わたしは初めて、



―――キスの温かさを知った。