君の左のポケットで~Now&Forever~

「それで、会って、食事して、送っていったんだ」


レンは、言葉を選びながら、ゆっくりと話している。


「帰らないでくれって。一緒にいてくれって、泣かれてさ。なかなか帰れなくなっちまって」


「それでもなんとか落ち着かせて、帰ってきたんだけどな」


泣いて…

レンを困らせて…


「今日もバイトだったろ? 帰り、あの子待っててさ、着いてきちまって」


「アパートの前についたけど、夜だし、そのまま一人で帰らせるわけにもいかないだろ? かと言って、部屋に上がらせるつもりもなかったんだ」


「それで、送ってくっていう話をしたら、また泣かれて…それで」


「引き返そうとしたら、抱きつかれてさ。このまま、しばらくいさせて欲しいって」


「お願いだから、少し抱きしめていてくれって…」



言葉を区切ったレンは、深いため息をついた。

わたしの頭に置かれた手も、止まっている。


「それを…お前が見たんだな」


「そのあとユウの声がして、お前を抱えたユウが戻ってきて…オレがその子送っていくから、ナナを見ててやれってさ」




わたしの呼吸は落ち着いていた。

優しいレン。

「いろいろ大変みたい」

ユウ君の言葉の意味がわかった。