君の左のポケットで~Now&Forever~

涙はやっぱり止まらない。

押し殺して泣こうとしても、込み上げる大きな想いが邪魔をして、ダメだった。


わたしは大声を上げて泣いた。

枕にしがみついて。


レンの手は、わたしの背中を撫でていた。

振り払おうと思った。

けれど、それもできなかった。


大好きなヒトの手。

わたしにはそれが、必要なんだ。

そう思うと余計に切なくて、

結局、振りほどけない自分が情けなくて、

涙はますます溢れ出すばかりだった。




「ナナ」


わたしの嗚咽が少しづつ治まったころ、背中を撫でていたレンの手が頭に移り、わたしの髪をそっとかき上げた。


「ナナ…ちゃんと説明するから。 な?」


優しい低い声で、耳元で呟くレン。

しゃくりあがってくる息は喉を締め付けて、わたしはまだ声を出せなかった。


「聞けるか? ナナ」


枕に顔を押し付けたまま、こくりと頷いた。


「あのな、あの子、バイト先の子なんだよ」


わたしは黙ってそれを聞く。


「少し前に告白されてさ。断ったんだ、ちゃんと。でも」



「どうしても諦めきれないから、少しだけでいいから二人だけで会ってくれって」



「メール。あの時の。大学の近くまで出てきてるからって。来なくても、ずっと待ってるって書いてあって」



「放っておけないだろ? だから向かったんだよ」