君の左のポケットで~Now&Forever~

頭ではわかっていた。

レンが、誰を好きになったって可笑しくない。

それは、わたしが責めることじゃない。


でも、どうしようもなく辛かった。

息苦しいほど、切なかった。


好きなヒトに、好きなヒトがいる。

どんなに好きになっても、思いは伝わらない。

それは、わたしが考えている以上に、酷なものだった。


「もうやだ…」

「ナナ」

「どうして優しくするの? どうしてここにいるの? 何で…」

「ナナ、違うんだ」

「さっきのヒトのところに行けば?」

「ナナ、聞け」

「行けばいいじゃない。どうしてここにいるの? 何でユウ君に送らせたりしてるの? あたしに悪いって思ったから? 好きでもないくせに…同情なんてしなくたっていい!」

「ナナ、落ち着けって」

「レンなんて嫌いだよ。大っきらい!」


痛くて、痛くて、どうしようもない。

ぎゅっと握りつぶされたような気持ちが、行き場を失っていた。


思いだけが先走って、何て言えばいいのか、わからない。

こんなこと、言いたくない。

レンのこと、責めたりなんてしたくない。

責められる立場に、わたしはいない。

なのに、わかっているのに、どうしても苦しかった。

 
泣くなんてずるい。

なのに涙は勝手にあふれてきて、枕の上にいくつも零れ落ちた。

泣いたら、またレンが優しくする。

わたしを傷つけないように、嘘をつく。


そんなの、イヤなのに。

なのに…