君の左のポケットで~Now&Forever~

(……ナ…ナナ…)


誰だろう。

ずっと遠いところで、名前を呼ばれているような気がする。


(…ナナ…ナナ!)


レン?

そうだ、この声…あたしの好きな…レンの声。


「ナナ!」

「……レン…?」

「ナナ! 気がついたか?」

「……レン? どうして…」

「良かった…心配したんだぞ」


重いまぶたを持ち上げる。

視界は白く濁っていて、数センチ先もよく見えない。


何度かゆっくりまばたきを繰り返すと、次第に明るさが戻ってきた。

わたしを覗き込むレンの顔。

身体に、温かい布団の感触。

頭の下の枕からは、嗅ぎなれたレンの匂いがした。


「お前…道の途中で倒れてたんだぞ」


少しきつい、だけど優しさの混じったレンの声が耳に入る。


「あたし…」

「熱、あったんだろ? 何で出かけたりしたんだよ」

「熱…だって…一人になりたくなかったんだもん…」

「ユウが見つけなかったら、あのまま倒れてたら、大変なことになってたんだぞ」


そうか…近づいてくる足音は、ユウ君だったんだ。


「ユウ…君は?」

「ユウは…今ちょっと出かけてる」

「あたし、ユウ君と買い物に行って…それで…」



―――はっとした。

レンは何事もなかったように話しているけれど、

あの時、レンは誰かを抱きしめていて…それでわたしは……