君の左のポケットで~Now&Forever~

「…え」


レンだ。

暗くて姿ははっきり見えないけれど、確かにレンだ。

シルエットで、そうだとわかる。

いつも、いつもいつも見ていたレン。

見間違うはずなんてなかった。


そのレンの隣に、誰かが、いた。

重なるようにして、小さい影が。


「ナナちゃん…!」


ユウ君があわててわたしを振り向かせようとしたけれど、もう遅かった。

わたしの目は、しっかりとその影を捉えていた。


時々ぼんやりと照らす街灯が、道の先のふたりを映し出す。

レンと…女のヒト。

二つの影は…ひとつだった。


レンがそのヒトを抱きしめるような形で。


「…何なの…?」

「ナナちゃん、あのさ…」

「…何で…?」

「ナナちゃん、これはその…」

「…やっぱり…そうだったんだ」

「ちゃんと説明す――」

「…女のヒトだったんだ」


真っ白だった。

ユウ君が何かを言いかけてわたしの腕をつかんだけれど、それを振りほどいた。


やっぱり。

やっぱりレンは、女のヒトと会ってたんだ。

昨日、わたしと別れてから、ずっとあのヒトと。


気がついたら、わたしは走り出していた。

もと来た道をただまっすぐに。


「ナナちゃん!」


後ろでユウ君が大声でわたしを呼んでいた。

振り返れなかった。

早く、その場から離れたくて、

わたしはただ…夢中で走った。