君の左のポケットで~Now&Forever~

俯いた顔を上げ、「あのさ」と口を開きかけた時、

右側を歩いていたユウ君が、突然わたしの前に回って声をあげた。


「ナナちん、オレ忘れた!」

「え?」

「買い忘れ!」

「何を?」

「雑誌。 今日発売日だったんだ。ね、ちょっと戻ってもいい?」

「え? ちょっと…明日でもいいんじゃ…」

「今日読みたいの! ね?」


ユウ君はわたしの肩に手をかけ、強引に後ろを振り向かせようとしている。


「ちょっとユウ君…」


肩をつかまれ、ユウ君の身体が右に回りこむ時、

後ろを振り向きかけたわたしの視線の先に、暗がりに浮かぶ人影が見えた。