君の左のポケットで~Now&Forever~

暗い空に、月が浮かんでいる。

昨日と同じ、細い細い三日月。

ベランダから見た、あの心細い気持ちを思い出す。


帰ってこないかもしれないヒトを待つ不安。

押しつぶされそうな孤独。

レンは帰ってきたけれど、昨日も今日も何も聞けなかった。


ユウ君と二人で歩く夜の道。

ちかちかと消えそうに光る街灯が、暗い道をぼんやりと照らしている。

風はさっきよりも弱まったけれど、首筋に絡まる夜気に、少し寒気がした。


「ナナちゃん」


コンビニの袋をぶらさげたユウ君が、ふいに呟いた。

レンよりも少し低い、けれどわたしよりも頭ひとつ高い位置で、ユウ君の視線とぶつかった。


「昨日さ…レンと話した?」

「…ううん」

「何も?」

「…うん。何も」

「そっか」


わたしはユウ君から視線をそらし、足元に伸びる道に目をやった。

ユウ君とわたしの足音だけが、しんと静まった夜道に鳴り響く。

アパートまであと少しだった。


ユウ君はきっと知っている。

レンが昨日、どこで誰といたのかを。

そして今日、その話を大学で会ったレンとしているはずだ。


「ユウ君」


わたしは俯いたまま、呟いた。

聞いてみよう。

レンに直接聞かされるより、ユウ君に聞いたほうが楽かもしれない。

そう思って。