「おーい、ナナちん、いる?」


トントンとドアを叩き、わたしを呼んでいた。


「ユウ君…」

「おーい、ナナちん」

「…開いてる…たぶん」


痛みの走る喉からは、なかなか声が出てこない。

ユウ君にわたしの声は届いていないみたいだった。


カチャっと音がして、ドアが開く気配がする。


「あれ? 開いてる? ナナちん、いるの?」

「ユウ君」

「あれー? 真っ暗じゃん。ナナちゃーん」

「ユウ君…!」

「え?」


靴を脱ぐ音が聞こえて、ユウ君が上がりこんでくるのがわかった。

ぱっと部屋が明るくなると、驚いた顔をしたユウ君が立っていた。


「ナナちん、どした? 真っ暗いところで、ぼうっとして」

「…何だかだるくって」

「え? 大丈夫?」

「…ごめんね、返事したんだけど」


けほけほけほっと咳が出て、話しているのも辛かった。


「ちょっ、ナナちん、ホントに大丈夫か?」


ユウ君が近づいて、わたしのおでこに手を当てた。


「…少し、熱あるみたいだな。ダメじゃん、こんなとこに寝てちゃ」


そう言うとユウ君は、わたしを抱きかかえてベッドまで運んだ。


「このまま襲っちゃってもいいんだけど」

「もう…そんなんばっかり」


こんな時でも、あははとふざけるユウ君の顔を見たら何となく安心した。


「ちゃんと寝てなさい」


わたしを寝かしたユウ君は、キッチンへ向かう。

タオルを取り出して水につける姿を見ているうちに、わたしはまた、眠ってしまったみたいだ。