「けほ…」


喉が痛い。

ぼうっとする頭は、何だか少し重い。

ゆっくりと身体を持ち上げて、ベランダから自転車置き場を覗き込む。

レンの姿は、もうなかった。


「はあ…」


ダルさに負けて、そのまま布団にもぐり込んだ。

スズメの声が聞こえて、秒針が刻む規則正しい音。

それに耳を澄ましていると、わたしはいつのまにか眠ってしまっていた。



目を覚ました時には、部屋の中はすっかり暗くなっていた。

さっきまであんなに明るかったのに…思いながら時計を見ると、6時になっていた。


「ええ…もうこんな時間」


驚いて身体を起こそうとしたけれど、何かを詰め込まれたみたいになかなか自由が効かなかった。

それでもなんとか身体を持ち上げて、ゆっくりベッドから立ち上がる。


ダルい。

床を踏む足は何だかふらついて、マットの上を歩いているみたいだった。

着替えを済ませて、ソファに身体を沈めると、再び眠気が襲ってくる。


「風邪…ひいちゃったのかな」


眠気に負けて、ふっと意識が遠のくころ、玄関からユウ君の声が聞こえた。