翌朝、レンは寝坊もせず普通に7時に起きた。

一睡もできなかったわたしは、レンがそっと起き上がるのをベッドの中でうずくまって見ていた。

頭がぼうっとして、働かない。


「おはよ」


レンは、ぼんやりと横たわったままのわたしにそう言って、てきぱきと身支度を整えていく。


「ちょっと上達したんじゃない?」


起き抜けの、ちょっとむくんだ顔のレンは、焦げ目も気にせず、黙々とカレーを食べていた。

わたしはベッドから起き上がれず、ぼうっとしたままそんなレンの顔を見る。


いつもと違う。

いつもなら、「焦げ臭い」とか「どうしたらこうなるの?」とか、ちょっと意地悪して言うはずなのに。


変に、優しい感じがする。


「ナナ、オレもう行くけど、今日バイトだしちょっと遅くなるから」

「…うん」

「もう少し寝てろ。昨日遅かったし、眠いだろ? 今日は何にもしなくていいから」

「…うん」

「じゃ、行ってくるな」

「…いってらっしゃい」


玄関を出ていくレンの姿を、わたしはベッドに横になったままで見送った。

黒いシャツのレンの後ろ姿を。

ぼうっとする、頭のままで。