レンは何事もなかったように着替えを済ませ、わたしを立たせるとベッドへ向かった。

向かう前にテーブルに乗ったコーヒーを見つけて、「あれ? ミルク切れてたのか」と呟いていた。

小さく頷いたら、「明日買ってくるからな」と微笑んだ。


「ほら、ちゃんと布団で寝ろ」

「…うん」

「おやすみ」

「…おやすみ」


レンはわたしがベッドに入るのを確認してから、ソファに横になった。

はあ…と深く吐くため息が聞こえると、それはすぐに寝息に変わった。


(レン…どこに行ってたの?)


わたしは眠れないまま、そればかりを頭で繰り返していた。


何も言わないレン。

何も聞けないわたし。


一体レンは、どこに行っていたのだろう。

誰と会っていたのだろう。

こんな…時間まで。


気がつくと、淡いブルーのカーテンは、外の空気を照らすように白く色づき始めていた。


青い光が部屋に少しづつ広がり始めても、わたしは眠ることができなかった。


ぼんやりと浮かぶレンの眠るソファを見つめたまま、寝返りも打てず、ただじっと横たわっているだけだった。


まるで、ストラップでいた頃のように。