キッチンを片付けて、ソファへ戻る。

テレビは洋画に切り替わっていた。

気がつけばもう、9時を過ぎていた。


「すぐに帰るから」


レンの言葉を思い出し、規則正しく動く掛け時計の秒針を見つめる。

「すぐに帰るから」…同じ言葉を呟いて、気持ちを落ち着かせようとしたけれど、

すぐに沸いてくる不安は、なかなか消えてはくれなかった。


洋画を眺めていても、内容なんて頭に入ってこない。

時計ばかりが気になって、何度も壁を見上げてしまう。


10時に針が届くころ、突然玄関のチャイムが鳴った。


ピンポーン――


はっとして、音の鳴るほうへ顔を向ける。


「レン?」


わたしは玄関へ駆け寄り、外を確認することもなく、急いでドアを開けた。