わたしは一人でアパートに戻り、レンの帰りを待っていた。


レンの帰りをひとりで待っている勇気がなかったわたしは、

寂しさを紛らわしたい気持ちから、部屋に戻る前にユウ君を訪ねようとしたけれど、

ベランダから覗いたユウ君の部屋は真っ暗で、

まだ戻ってきていないようだった。


わたしは頼るヒトもなく、重い足を引きずって階段をあがった。


夕日は沈み、辺りはすっかり暗くなっている。

部屋にあがると、開いたカーテンの向こうにぼんやりとした細い月が浮かんでいた。


弱い月明かりは部屋を満たすこともなく、

しんとした部屋は耳鳴りがするほど心細かった。


大学やバイト先から戻ってくるレンを待っているのには慣れた。

ひとりでテレビを見たり、

掃除をしたり、

料理をしたりして。


必ず戻ってくるとわかっていたから、

ひとりで待っている時間だって、やり過ごせた。


時計の針が動くたび、レンの帰ってくる時間が近づいてくる。

そう思えば、何でもなかった。


でも、今日は違っていた。

暗い部屋の真ん中で、細い月だけがわたしを見ている。

時計の針が動いても、

かえってそれは、レンを時間とともに遠くしているような感じがした。