立ち止まったレンは、何か考えているようだった。
画面を見つめたまま、渋い顔をしている。
「レン? どうしたの?」
「いや」
携帯を閉じてポケットにしまったレンは、首を傾けて川を眺めた。
「ナナ、こっから一人で帰れるか?」
ふう…と息を吐いたレンは、わたしに向き直ってそう言った。
夕日を背負ったレンの姿が、何となく重々しく見えたわたしは、少し間をおいて、こくりと頷いた。
「大丈夫か?」
「…うん」
「すぐ帰るから」
「…どこかに、行くの?」
「…ちょっとな。ごめんな」
「…うん」
わたしの頭を撫でたレンは、くるりと振り向いてもと来た道を引き返していった。
わたしは、その後ろ姿をじっと見ていた。
レンの頭の影がわたしの足元を離れて、レンの姿も次第に小さくなる。
「レン…」
呼んでみたけれど、聞こえるはずもなかった。
少し冷たくなった風が、頬を滑って通り過ぎる。
レンの姿は、夕日に溶けて滲んで見えなくなった。
ふと、ユウ君の言葉を思い出した。