「レンが好き…大好き」
小さく呟いた言葉は、足音に消されて溶けていく。
溢れそうな涙を、奥歯をかんで呑み込んだ。
ブー・ブー・ブー……
ふいに、腕を組んだレンの左のポケットから振動が伝わってきた。
携帯が小さく震えていた。
「ん? ナナ、ちょっとごめん」
レンはポケットから携帯を取り出した。
わたしはレンの腕を放し、画面を眺めるレンの顔を見上げる。
「メール?」
「うん」
いつものメールだ。
と言っても、わたしはその内容を見たことはないから、
レンが誰とメールをしていて、それがどんなメールなのか、わからないのだけれど。
携帯についていた時だって、そこにぶら下がって揺れていただけだ。
レンはじっと画面を見つめている。
眉間に、少し皺が寄っているみたいだった。

