「帰ろっか」
テーブルの上の空いたお菓子の袋を集めてレンが立ち上がる。
「うん」
わたしも立ち上がり、紙コップを重ねてゴミ箱に運んだ。
ロビーに射しこむ光は、さっきよりも濃くなっている。
サークルの部室から、大きな笑い声が聞こえてくる。
人気の少ないロビーは、ゆっくりとした夕方を迎えていた。
「自転車で来ればよかったな」
隣を歩くレンは、ジャケットのポケットに手を入れて、真っ直ぐ小道の向こうを眺めている。
右に流れる川は、夕日を反射してオレンジ色に輝いていた。
遠くに広がるビルの上に、同じ色に染まった雲が浮かんでいる。
後ろにある太陽は、わたしたちの影を長く伸ばしていた。
わたしの影。
隣に伸びる、レンの影。
その影を見ながら、わたしはそっと呟いた。
「レン」
「んー?」
「腕、組んでもいい?」
「腕?」
「ダメ?」
「…いいよ」
レンはポケットに入れた腕を「ほら」って感じでわたしのいる左に突き出した。
間に腕を通して、ぎゅっとレンの腕を握る。
目の前の影は、ぴったりと寄り添って、わたしたちと一緒に前に進む。
レンの腕はあったかくて、もっとずっとこうしていたくって、
わたしは、自転車でこなくて良かったと思った。
歩いて帰るこの道が、ずっと長く続けばいいのに…そう思った。

