ユウ君はその夜、レンがいくら揺り動かしても起きなくて、諦めたレンが毛布をかけてあげた。



わたしはベッドで、レンはソファで、ユウ君は床の上で、それぞれ眠って、それぞれ朝をむかえた。



3人ともすっかり寝入ってしまって、目が覚めてカーテンを開いてみると、太陽はすっかり真上に昇っていた。



日曜日のゆったりした昼下がり。


瞳に、じんと入ってくる陽射しが眩しくて目を閉じると、まぶたの裏に緑色の丸い影が躍っていた。



目が覚めたユウ君は「チュウして」何て言ったことを全然覚えていなくって、レンに叱られてシュンとしていた。



「ごめんね、ナナちん」と、ユウ君らしい大袈裟な土下座をしてみせて、わたしは少し笑った。



何か少しでも文句を言ってあげたい気分だったけれど、ユウ君のこういうところは憎みきれない。



「びっくりしたんだから」と言うと、顔の前で何度も手を合わせて謝っていた。



「でもオレちょっと、ナナちんのこと狙っちゃおうかな」と付け足したユウ君に、レンはぴくりと眉を吊り上げて、ぺしりとオシリを叩いた。



何だか可笑しくて、3人で笑った。



日曜だったので、特にすることもなかったわたしたちは、外に出た。



道路からベランダを見上げると、アパートの屋根の上でスズメたちがぴょんぴょんと遊んでいる。



隣の部屋と下の階の端の部屋のベランダには、布団が干されていた。



顔を撫でる風は、10日前よりも穏やかさを増している。




春はもう、来ているみたいだった。