リンゴジュースを開けたのはいいけれど、なんだか飲む気になれなかったわたしは、
「よいしょ」とわざと大きな声を出して、3人分のお皿を重ねてキッチンへ運んだ。
うつぶせに寝そべったままテレビを見ているユウ君が邪魔だったので、
踏まないように背中の上を慎重にまたいだ。
皿を洗いながら、視界の片隅に映るレンの様子をうかがってみる。
レンは携帯を手にしてメールのチェックをしているみたいだった。
テレビから流れる音がニュース番組のアナウンサーの声になると、
太ももから先だけ見えていたユウ君の足先が上を向いて、レンに話しかけた。
「そういえばさレン、お前、あれどうしたの?」
「ん? あれって?」
「携帯」
「え?」
「ストラップ。白クマのついてたろ」
「ああ、ストラップ」
「ついてないじゃん。取ったの?」
「いや。なんか、無いんだよ」
「無い?」
「うん。探したんだけど」
「どっかに落としたのか?」
「わかんね…」
「ふーん」
わたしは聞き耳を立てた。
水道の音がうるさかったから、ちょっと弱めて。

