残された過去のメールに目を通し、隆夫さんの文体をまねた。

メールにあった話題をふり、思い出を共有しようと努めた。

そして今、多江さんは【天国からのメール】を完全に信じている。

「だから、旭さんにお願いがあるんだ」

和夫さんは視線をあたしに戻した。

「多江さんに、メールの送り主は僕だということは明かさないでほしい」

何となく、そんなことだろうと思っていた。

「言いませんよ」

今度はあたしの方から視線を外した。

「頼む」

和夫さんは小さく頭を下げた。

「ひとつ訊いていいですか」

「何だい」

「メールの送り主が和夫さんだということを知っている人は、他にいるんですか」

ここのところは重要な問題だった。

もし秘密を知っているのがあたしだけだとしたら、ちょっと荷が重い。

「…婦長さんも知っている。僕の方から話した」

まぁ婦長さんは多江さんの身内だしね。

ひとりぐらいには真実を伝えとかないと。