多江さんは頬を染めながらうなずいた。

天国から来るメールを全く疑ってない。

愛しているとはいえ、なぜそれを受け入れられるんだろう。

いや愛しているから受け入れられないのか、恋人の『死』を。

それにしてもメールの送り主は…。

「行くぞ、カホ」

達郎兄ちゃんがあたしを促した。

その顔にはこれ以上は野暮だと書いてあった。

あたしは松葉杖をついて立ち上がった。

「じゃ雪村さん、自分たちはこれで」

達郎兄ちゃんは頭を下げた。

「またサークルでお会いできるといいですね」

「私も久し振りにお会いできて嬉しかったです」

ごきげんよう、と多江さんは頭を下げた。

ごきげんよう、か。

多江さんは真性のお嬢だな。

あたしは会釈を返しながらそう思った。

そして達郎兄ちゃんにドアを開けてもらって、屋上を出る。

「達郎兄ちゃん、どう思った?」

達郎兄ちゃんが、ドアを閉めると同時に、そう訊いた。