月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側

うん、やっぱ美人だ。

美女は右手に携帯を握っていた。

ずっと画面に目を落としているところから察するに、何かサイトでも見ているのだろうか。

時おり、ボタンを触っている。

ゲームでもやっているのかしらん?

あまりにもまじまじと見ていたせいだろうか、美女があたしの視線に気づいた。

「あの、何か?」

顔は笑顔だったが、声には不審の色がたっぷり。

あたしは慌てた。

「あの、貴女もここの患者さんですか?」

そりゃそうだろう。

こんな時間に屋上で携帯いじってるんだから患者さんに決まってるだろう。

何を言っとるのだ、あたしは。

「はい、そうですが」

美女は声だけでなく、顔にも不審の色を浮かべた(ように見えた)。

いかん、やばい!

「あの、あたしケガしたんです」

あたしは松葉杖をつかむと、美女に向かってかかげた。

「車にひかれそうになった猫を助けて足をケガして、それで入院することになったんです!」