月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側

でも何か引き込まれるような魅力が、彼女にはあった。

あたしはベンチに松葉杖をたてかけると、ポケットから携帯を出した。

話すのがダメならメールにしようと思ったのだ。

しかしメールしたところで、湯月くんがメールを返してくるという保証はない。

思い余って(?)電話してくるかもしれない。

それはあたしの望む展開ではない。

あたしはあきらめて、携帯をポケットに戻した。

その時、小さな笑い声が聞こえた。

あたしは声のした方に目をやる。

隣の美女が、口元に手を当てて笑っていた。

『こんな美人でも笑うのね…』

いや、当たり前の話なのはわかってる

でも、楚々とした美女は声など出して笑わないだろうな~という、変な思い込みをしていたのだ。

あたしは改めて美女の横顔を眺めた。

笑っても、どこか品の良さがある。

薄い水色のワンピースと紺色のカーディガン。

地味だけど、貧相に見えないのは、美女自身が持つ雰囲気のせいか。