「借金も遺産もらえなくなったのも、全部自分のせい。自業自得だっつーの」

一方で、あたしは複雑な思いを抱えていた。

「どうした、カホ」

「達郎兄ちゃん、多江さんが殺されたのって、やっぱあたしのせいかな」

「どういうことだ」

「だって、多江さんが殺されたのって病気が治ったからでしょ。それは和夫さんが真実を告白したからで、その和夫さんが真実を告白したのは、あたしが余計な事を言ったせいで…」

あたしはベッドのシーツを握りしめた。

「あたしが余計な事を言わなけりゃ、多江さんは…」

その時、昨夜よりはるかに力のこもったチョップが、あたしの脳天に叩き込まれた。

「カホ、あんたバカ?」

真顔の麗美姉ちゃんがそこにいた。

「じゃあなに、医者が治した患者が退院して事件起こしたら、それは医者のせいなの?」

ずい、と麗美姉ちゃんの顔が近くに寄る。

その右手は拳に変わっていた。