「あのー」

湯月くんがおずおずと口を開いた。

「僕、来ない方が良かったですか?」

「どうしてそうなるのよ!」

どんなネガティブ野郎だお前は!?

「まぁそう怒るなよ」

顔を真っ青にしている湯月くんに代わって、達郎兄ちゃんが口を開いた。

「湯月くんは先生から預かった課題を持ってきてくれたんだから」

達郎兄ちゃんの言う通り、湯月くんはプリントの束を抱えていた。

「あ、ごめん。ありがとうね、湯月くん」

「い、いえ」

湯月くんはあたしにプリントの束を押しつけた。

「じゃあ僕はこれで!」

そう言うと湯月くんは駆け出すようにして病室を出ていった。

「湯月くん!」

あたしは後を追おうとしたが、ベッドから降りる直前、足をケガしていたことを思い出した。

「気付いて良かったな、カホ」

達郎兄ちゃんが飄々と言った。

「気付かず降りたら入院が延びるところだった」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」