月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側

そりゃそうだ。

初対面だもんな。

「あたしの従兄の達郎兄ちゃんです」

あたしは2人の間に割って入った。

「多江さんの最期について知りたくて、婦長さんに話を聞いてきたとこなんです」

「多江君の…」

藤上先生の顔から、表情が消えた。

「どうしました」

達郎兄ちゃんの言葉に、藤上先生はあわてて首を振る。

「何でもない。で、訊きたいこととは?」

あたしたちは昨日の多江さんの様子、事件が起きた時の状況を訊いた。

「多江君の様子は、あまり変わりないようだったが…」

そのへんの話は、婦長さんのそれと一緒だった。

「先生も多江さんは自殺したとお考えですか」

達郎兄ちゃんが訊く。

「当然だろう」

即答だった。

「婦長あてに遺書のようなものをメールしてきてるし、実際に多江君は屋上から飛び降りてるんだから」

藤上先生は手振りを交えながら、自分の見解を述べた。