だが婦長さんは、たたみかけるような達郎兄ちゃんの口調に気おされたらしく、どうぞと言って本を貸してくれた。
―――――――――――
「けっきょく多江さんの自殺の動機、わからなかったね」
あたしは車椅子を押す達郎兄ちゃんを見上げて言った。
婦長さんから借りた本は、すでに肩から下げたカバンに入っている。
「なぁ、カホ」
「なぁに?」
「多江さんは本当に自殺したと思うか」
「え?」
何を今さら。
「疑問に思ったから調べはじめたんでしょ?」
そう言った後で、ハッとなった。
多江さんの死が自殺じゃないのなら、他殺…?
「達郎兄ちゃん、何かおかしな点を見つけたの?」
「具体的に何とは言えないが…」
「教えて!」
思わず叫んだ時、達郎兄ちゃんが「おっと」と車椅子をとめた。
あたしの頭の上で「うわっ」という声がする。
聞き覚えのある声。
その声の主は、藤上先生だった。
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「けっきょく多江さんの自殺の動機、わからなかったね」
あたしは車椅子を押す達郎兄ちゃんを見上げて言った。
婦長さんから借りた本は、すでに肩から下げたカバンに入っている。
「なぁ、カホ」
「なぁに?」
「多江さんは本当に自殺したと思うか」
「え?」
何を今さら。
「疑問に思ったから調べはじめたんでしょ?」
そう言った後で、ハッとなった。
多江さんの死が自殺じゃないのなら、他殺…?
「達郎兄ちゃん、何かおかしな点を見つけたの?」
「具体的に何とは言えないが…」
「教えて!」
思わず叫んだ時、達郎兄ちゃんが「おっと」と車椅子をとめた。
あたしの頭の上で「うわっ」という声がする。
聞き覚えのある声。
その声の主は、藤上先生だった。


