外に出た2人はやがて、地面に叩きつけられた多江さんを発見した。

「その後はもう…」

婦長さんは、そっと涙をぬぐうような仕草を見せた。

あたしは昨夜の混乱した病院内の状況を思い出した。

多江さんは即死状態だったというから、あらゆる手を尽くしても救えなかったという、無念の思いもあるのだろう。

「ひとつ伺ってもよろしいでしょうか」

達郎兄ちゃんが口を開いた。

「多江さんの自殺の動機は何だとお考えですか」

「動機、ですか…」

「病気に悩んでいたという事は考えられますか」

「わかりません」

婦長さんは小さく首を振った。

「イェマント氏病は、非常に厄介な病気と聞いてますが」

デリケートな話題と思ったのか、達郎兄ちゃんも声をひそめた。

「よくご存じですわね」

婦長さんがちらりとあたしを見る。

う、そういえば多江さんの病状については口止めされてたんだった。

今さらながら、冷たい汗が背中から吹き出る。