しばらくして病室を出た。

すると病室の直ぐそこにある椅子に、先輩が足を組んで座っていた。


先輩……



「いつ、病室を出たんですか?」


「お前が来てすぐ」



気を、使ってくれたのかな。



「……帰ろう、結衣」



スッと立ち上がると彼はポケットに手を突っ込んで歩き出す。


…え……?



「送ってやる」


「……………」



今、先輩……結衣って呼んだ…?

呼んだよね……?


衝撃を受け過ぎて動けないんだが…!



「おい、早く来い」


「今、先輩!結衣って言いましたよね!?」



初めて呼ばれた!!

いつもは無愛想に〝お前〟なのに!



「言ってない、バーカ」


「言った!絶っっ対に、言いました!」


「うるせ…」





先輩の、悪戯っぽい笑顔が
やけに輝いて見えた。


春―――…