「本当に、歌っていいのか?」
「うん。歌って…?」
「本当に、許して…くれるのか…っ」
彼の弱い姿を見て〝守ってあげたい〟って強く思うの。
守って、守られて。
繋いで、繋がって。
そうやって人は成長して行く。
「はい。誰も先輩を恨んでません。あたしもあっくんも…」
先輩の手を握る。
ギターを器用に弾く、先輩の大きな手。
「ありがとう、結衣」
初冬の風は冷たいけれど、あたしの心はこんなにも温かいよ。
「出逢ってくれてありがとう」
あたしと先輩が出逢ったことにもしも理由があるとするなら、
――きっとお互いを支え合うため。
きっとそう。



