泣きじゃくるあたしに彼は手を伸ばそうとしてやめた。そして困り果てたようにあたしから目を反らす。 先輩の歌は、あたしにとって〝苦しめられたもの〟じゃない。 あの時は希望に、 そして今はあたしの夢と未来になった。 「…あたしの為に歌い続けてよ」 先輩のコートをギュッと握り、小さく揺する。 「あたしがもう歌わなくていいって言うまで…」 「…………」 「お願い。夢を諦めないで」 先輩の瞳が揺れた。 その、綺麗な綺麗な瞳から溢れたひとつの雫を、手を伸ばして拭ってあげる。 泣かないで。