「うた…?」



でも先輩は忘れちゃいけないものを、



「オレ、歌なんか歌ってたのか…?」



どこかに落として来た。





「…え?」

――…一瞬、時が止まったのかと思った。



あの先輩が、

歌を、自分の夢までも忘れたなんて。



…こんなこと、誰が望んだんだろう。


今から拾いに行けば、
落とした物は見つかるのかな?



「…っ……」



だったらあたしは、今すぐにでも駆け出して行くのに。


でも…―――


泣き顔を見られたくなくて、あたしは視線を下に向ける。


先輩の命と引き換えに

神様は、大切な大切な夢を奪ったんだ。