「歌の好みが似てるからじゃねーの?」 「そうですね」 そうかもしれない。 ――…けど、きっと。 あたしは先輩の声が好きなんだと思う。 心に響く、なんとも言えない快感。 そう、気持ち良いの。先輩の歌声は。 「これ、やるよ」 彼が差し出したのは黒のウォークマン。 「俺の好きな歌が入ってるから、お前も好きだと思うけど?」 「でも……いいんですか?」 「あぁ。古いし、買い直すつもりだから、もう要らねぇ」 先輩の手からそれを受けとる。