重なる平行線

「大人が嫌なんだよ」

話の内容にしては明るめなその声に耳を傾ける。

「いや…、大人は別にいーんだ。
俺は、大人になるのが厭なんだ。」

「…大人になること?」

「大人と子供の境界線は何処かとか、そんな下らねぇのじゃなくて。
俺はもっと下らねぇものが恐い。」

「うん」

「人は変わっていく。気持ちも、体も。それは別に当たり前だと思う。変わるのは、別に良い。
…大人と同じになってしまうことが恐い。大人が自分に当てはまってしまうことが恐い。

俺が今まで見てきたのは、汚ねぇ大人の中でも最高に嬉しく汚ねぇ奴等ばっかりだった。
周りにそんな奴等しかいなかった。

…だからなんだろうな。
餓鬼の頃から、大人になるのが怖かった。
毎日毎日祈ってたよ。
俺をあいつらにしないで下さいってな。」
自嘲気味に肩を揺らしたのが、私の背に伝わってくる。

「けどな、…わかってるんだよ。このままじゃいられないってこと。
子供のままでは生きられない。変わらなきゃ、いけなくなる。
いつか、選ばなきゃいけない時がやってくる。

俺はその時が恐い、怖いよ」

抑揚の無い言い方なのに、どこか縋るようだった。

「…うん」

「だけど…何処かで、選択肢が来るのを待っている俺がいる」

「…うん」

「俺は、大人にならずに、成長したい。」

「…うん」