重なる平行線

絨毯のせいで足音は吸収されているけどそいつの気配は私のすぐ後ろまで来ていた。

背中にいるやつが、父親を殺したやつであってほしいと願った。

「―よぉ、お邪魔してるぜ」

「……いらっしゃい」

無愛想な私の受け答えに水貴は静かに笑う。

「言っておくけど、お前の父ちゃん殺したのは俺じゃない」

「…知ってる」

少し、期待しただけ。

「よっこら小吉」

随分と年より臭い発言をして、床に座り込んだ。

私の背中と水貴の背中がくっついて、ああやっぱり水貴の方が背が高いんだなと認識する。
水貴の背中の方が、少しだけ大きかったから。


「玄関の鍵開いてた。無用心だなお前」

「あぁ…、そうだっけ」
わざと閉めなかった気がする。

「…ふぅん?」
水貴は片眉をあげ口角をにやりと…、したと思う。
顔が見えないから、声の口調で推測するしかない。

「…こんなんでごめんね。連絡した時は、まだ元気だったんだけど、少し疲れたみたい」

「んー、あぁ気にすんなー」
にゅひひと、まるで今じゃない私みたいに笑った。

「美月」

「…うん」

「もし家に来たのが俺じゃなくてその殺人犯だったら…、逃げようとしたか?…殺されることを望んだか?」

「…………。」

「お前、死にそうな顔してるぞ」

右手で頬に触れる。
「そんなこと、ないよ」
わからなかった。