すると、錫代は唇を噛み締めて、小さな拳にかたく力を入れた。 「……私は、奏斗先輩のことが好きなんです……」 小刻みに震える小さな声は、確かに俺の鼓膜に届いた。 でも、俺は聞こえないふりをして、本の森の奥へと身を沈める。 ……宝石のような輝きを零れるくらいに湛えた瞳も見なかったふりして……。 でも、これでいいんだ。 どんなに似ていても星羅じゃない。 俺のためにも、錫代のためにも、深く関わらないのが一番だ――。 俺自身が変わらないでいるためにも。