そして、小さく啜り泣く声に、蝉の音が重なっていく……。 「泣きたいのは智也の方だろ。昔からなんだぞ」 ――ずっとずっと、智也が千秋を想ってきたのは俺も知ってる。 でも、千秋は雅臣しか見てないから、智也は今も変わらぬ想いを、胸にしまい続けてきたのだろう。 「……何も気付かなかった……。あたし、自分のことばっかでっ――」 言葉につまると、堰を切ったように泣きじゃくりはじめた千秋。 本当に手が掛かる……。 俺は仕方なくポケットを探って、くしゃくしゃなハンカチを千秋の頭にぱさりと落とした。