「八年前、……姉を亡くしてから」
――姉を……?
あまりのことに何も言葉にならない。
ただ落ちるのは沈黙だけ。
あんなに明るく振る舞う錫代に、こんな過去があったなんて誰も思いもしないだろう。
何も知らなかった、姉妹がいたことも、ましてや亡くなっていたことなど……。
だって、俺なんかにも笑顔を向ける錫代は、そんなこと微塵も感じさせなかった。
「優しくて運動も勉強もできる自慢のお姉ちゃんだったのに、私が七歳の時に事故で……。それから親は喧嘩ばっかり……」
声はうわずっているが、決して錫代は俯くことなく話し続けた。


