レースのカーテンを静かに開けると、真っ暗な空を見上げる錫代。
雨は降り続き、雨雲は月を隠す――。
ただ黙って佇む錫代は、一体何を思っているのだろう……。
向けられた背中は、余計に小さく、そして心なしか震えているようにも見えた。
「うちの親、離婚寸前なんですよ」
すると突然、笑い話のような調子で言ってのける錫代。
内心驚きはしたが、今日のあの光景を思い出せば合点がいく。
だけど、俺は錫代の空笑いの方が、重く耳に残った。
違和感だらけで、あまりに響きが虚しすぎる。
――だが、錫代は更なる決定的な言葉を口にした――。


