小さくゆっくりな足音。
「どうした?眠れないのか」
俺はため息を吐きながら、リビングに現れた錫代に声をかける。
「あ、すみません……。奏斗先輩も、泊めてくださっってありがとうございます」
少し大きなおふくろのパジャマをだぼっと身に付けている錫代が控えめな声で礼を言う。
改めて見ると錫代の体はひどく華奢で、この薄暗さの中では肌はより一層青白かった。
「……ん」
特に言葉を発さず適当なコップで水をぶっきらぼうに差し出せば、錫代は小さく頭を下げて細い指で手に取る。
そして、錫代は震える声で言葉を紡いだ――。


