でも、俺は錫代の言葉よりあの表情が焼き付いて忘れられなかった。
あんなに溺れかけそうな苦しい顔してまで、何抱えてんだよ……。
「……一晩だけだろ。ここまで頼んでんだから泊めてやれよ」
関わらないと決めたのについ口を出してしまった俺。
三人とも目を丸くしているが、特におふくろは言葉を失うほど驚いているようだ。
「――仕方ないな。翠月ちゃん、明日の朝には帰るんだよ」
「ありがとうございます!」
親父の了承の言葉に安堵の笑みをこぼす錫代。
結局、部屋数があまりないため、俺の部屋を錫代に明け渡すという条件をおふくろにつけられ、許可が下りたのだ。


