「……だが、今頃、きっと心配してるだろう」
いくら親父でも困り果て、言葉を選びながら説得を試みる。
でも、錫代は自嘲気味に笑いながら泣きそうな声で言った。
「うちの親なら平気です。私のことなんて気にしてませんから」
大したことではないと軽く笑ったが、俺は見逃さなかった、一瞬笑顔が消えたのを――。
その笑顔が消え去った姿から感じたのは深い闇。
光を失った死んだ目は、俺自身を見てるよう……。
「何言ってるの!心配しない親なんていないわ!!」
そんな錫代に本気で怒鳴るおふくろは泣きそうな顔をしてた。
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