階段を降りきると正面にある玄関にぶつりと呟く。 「いちいち呼ばない……」 しかし、俺は玄関にある一人の少女の姿に言葉を失った――。 びしょ濡れになって重く貼りつく栗色の長い髪に、血の気を失ったように白すぎる肌。 「奏斗、もたもたしないで持ってきて!」 「……錫代……?」 頭が認識し終えたら、勝手に口を突いて出た。 「あはは……、すみません、奏斗先輩」 静かに届いたのは、擦れているけど、紛れもなく錫代の声そのもの。 そして、錫代は眉を八の字にして困ったように笑いかけるのだった……。