まだ雅臣の荒げた声が鼓膜に残っているようだった。


あの日と同じように……。


あの日から何も変わらない。


何があっても強くいられる雅臣と、意気地なしの俺。


俺は絶対に雅臣のようには思えないよ――。


「……雅臣……」


「大丈夫か、千秋?」


震える声で力なく名を呼ぶ千秋の頭を、武骨な手で壊れ物のように撫でる智也。


「心配だから、行ってくるね――」


そう言って雅臣を追う千秋を、智也は儚い笑顔で見送っていた。


……見ていて、思う……。


俺には追い掛ける勇気も笑顔で送る心の強さもないと。