「でも、私のは自分で言うから」
「なら、その時は二人で話せよ」
「だ・か・ら! あんたはどーしてくっつけさせようとするのよ、このバカ志貴!」
「誰がバカだ。お前らが素直にならねぇーからだろう?」
「あんただって知ってるでしょ? 私がよくても、先輩がよくないの!」
「あのなぁ……。なんで隼人がセっ――?」
呼び鈴が鳴る。
携帯も鳴り、見れば隼人からだった。
「ほら、隼人が来たぞ」
「……わかってるわよ」
部屋に入るなり、なんとなく雰囲気で状況を察したのだろう。隼人はオレに、またケンカ? と苦笑いで聞く。
「そんなつもりねぇーよ。あいつが強情なのが悪い」
「誰が強情よ。バカ志貴が余計なこと言うから」
「バカって言うやつの方がバカなんだよ」
「ふんっ。前は志貴の方がバカバカ言ってたくせに」
「今は関係ねぇーだろうが。紫乃、お前案外根に持つな?」
「そんなのお互い様。だいたい志貴は――!」
「ストーップ!! 二人とも、仲がいいのはわかったから」
「「仲良くない!!」」
「いや、息ピッタリじゃん。それに、二人とも名前で呼びだしてる。さすがは身内」
「「…………」」
「ほらほら、何か大事な話があるんでしょ? 早く話そうよ」
隼人に言われ、オレたちはそれ以上言い争うことをやめた。
藤原のことはひとまず伏せ、真白に変なメールが来ていることや、写真のこと(どんなものかは言っていない)を話した。
なんとなく気付いていたのか、藤原は眉間にしわを寄せていた。
本当なら、隼人たちに話すことなく解決するのがいいだろう。
だが、オレだけでは手が回らない。ずっと真白のそばにいれるわけじゃないし、一人でどうにかできる範囲じゃないからな。
「志貴に送られた写真、見てもいい?」
「悪い、真白に聞いてからにしてくれ」
「じゃあ送信者のアド。それと、真白ちゃんに送られてるやつもね。それから紫乃ちゃん」
「? 私が何か?」
「隠し事――あるでしょ?」
頬杖を付きながら、藤原に視線を向けた。
やっぱ、もう嗅ぎつけてたか。
これはそろそろ退散するべきだろうと、オレは立ち上った。
「それじゃ、オレは先に」
「ま、まだ帰ることっ!」
「隼人、襲うなよ」
「そーんなことしないって。――多分」
珍しい発言。思わず間の抜けた声をもらせば、これまた珍しく、早く出てくれる? と言われた。
「先輩、変ですよ? いつもそんなこと……」
「藤原。鍵、ドアポストに入れとく」
「ちょっ!? バカ志貴ぃ~~~!!」
藤原のことなど無視して、外に出て鍵をかける。鍵をドアポストに入れると、オレは浅宮に電話をかけながら歩いた。
「悪い。今いいか?」
『その分だと、何か二人に起きたってとこかしら?』
相変わらず察しがいいことで。
「あぁ。藤原のは知ってたが、真白のはさっき知ってな。――部活のやつらに、話は聞けたのか?」
前に、真白のクラスの雰囲気が気になるからと言い、声をかけてみると言っていた。
何もないことを願ったが、浅宮は歯切れが悪そうに話を始めた。
『クラスもだけど、クラス外の方が酷いみたいね』
「クラス外? つーか、やっぱクラスでも何かあるのか?」
『その子の話だと、真白ちゃんの持ち物を破ってる子を見たらしいの。でも遠くからだったみたいで、顔とかクラスはわからないみたいね。あとは――よくある学校裏サイトの掲示板。今じゃ特定されやすいから、ここに書き込んだりするのは減ってると聞いていたけど』
今まさにパソコンでアクセスしているらしく、翠はそこに書き込まれている内容を読み上げていく。
『眠り姫は目覚めるな、一生寝てろ。
寝るだの病気とか都合がいい。ただの仮病でしょ?
男に媚びてるサイテー女。あんなのまわされちゃえばいいのよ。
――他にも、結構な書き込みがあるわね。でも、大概は書き込むだけで、実行に移すなんて子は一握り』
「そこに書き込んだやつが犯人ってことか」
『そうとは限らないわ。今はSNSがたくさんあるでしょ? 自分達しか見れない場所や、そういうアプリで話をしていたらわからないもの。――東雲さんにも聞いてみましょうか?』
「あの人にそんな暇があるのか?」
『さぁ、どうでしょうね?』
「どうでしょうねって。お前、仮にも婚約者だろう?」
『干渉し過ぎないっていうのがルールなのよ。それより、またわかったら連絡するわ』
電話を切ると、オレはまたすぐ電話をかけた。
大丈夫だろうが、ま、念の為。



