「――日曜、デートでいいか?」
「っ! で、デート、ですか?」
「まだしてねぇーし、行きたいとこがあるならいいだろう?」
「…………」
「また顔が赤いぞ」
「そ、そんなに赤くはっ」
「デートが恥ずかしいのか?」
「……ちょっと、だけ」
まともに、デートっていうデートをしたことないし。
それに……街中で倒れたら。
「……いいん、ですか?」
「何がだ?」
「倒れたりしたら……連れて帰るの、大変ですし」
「んなこと気にしてたのか? お前抱えるぐらいなんてことねぇーよ。デート嫌なのか?」
「そ、そんなことないです!――先輩が、大丈夫なら」
「じゃあ、日曜は決まりだな?」
頷けば、先輩は目を細めながら、うれしそうに左手を握った。
「オレは彼氏なんだろう? 少しは甘えろ」
手の甲に、先輩の唇がちゅっと音を当て触れた。
本でしか見たことがないその行動に、私は顔が熱くなっていた。
「……、……っ」
「ふふっ。やっぱ、反応いいよな」
襲わなくても、やっぱり悪戯はしてくるんだ。
私が恥ずかしがるようなこと、さらっとやっちゃうんだもん。
「――なぁ。今朝のこと、覚えてるか?」
「今朝って――」
「真白からオレに――な?」
自分の頬を指差し、怪しい笑みで私を見る。
「忘れてねぇーよな?」
「…………忘れて、ないです」
自分からしたいって思ったんだし、今日は……期待、してる。
「続き――するか?」
真っすぐ、力強い瞳が私を見つめる。
声はいつもと違い、あの甘い声が体に浸透していく――。
「真白。したくないのか?」
「っ、…………したい、です」
「オレに、どうしてほしいんだ?」
「ど、どうって、そのう」
「今朝みたいに素直になれ。そうしたら――してやる」
耳元で囁く声が、全身を痺れさせる。
キスだけじゃない。抱きしめてほしいと、そんな気持ちまでわいくる。
でも、自分の口から言うのはやっぱり恥ずかしいから、布団に顔を埋めながら小さく、
「先に――。ぎゅって、してほしい……です」
思っていることを、口にしてみた。
チラッと見れば、先輩は目を丸くして私を見ていた。
「…………」
「…………」
黙ったままでいられると、困るんだけどなぁ。
「抱きしめるには、オレも入らなきゃだよな?」
い、今黒い笑みになったような……。
「ひっ!?」
「真白から言ったくせに、その反応は無いだろう?」
布団をはがし入ってこようとする先輩に、私は壁際へ逃げた。
二人の重みで、ギシッとベッドが揺れる。
身を丸くしていれば、そっと体が抱きしめられた。
「逃げることねぇーだろう?」
「だ、だって……」
さすがに、こうなることは予想してなかったから。
抱きしめてほしいって思ったけど、今はもうちょっと、離れてほしいなって。
「顔――見せろよ」
耳元で、甘い声が囁かれる。
体は素直に反応し、言われたとおり、先輩に視線を合せていた。
「抱きしめるのは、これで満足なのか?」
「? 満足って――」
「好きなやり方がねぇーのかなって」
「こ、これも、好きです」
「なら、オレが好きなのやっていいか?」
「……変なことじゃないですよね?」
「疑うなって。ほら、背中向けろ」
言われるがまま背中を向ければ、先輩は背後から、お腹を抱きしめた。



